ラジオ予告

 先日のラジオの後、担当から「オレもラジオに出たい。オレも出せ」という直々のお言葉を頂きまして、ええ、そりゃあもう出版社様からの注文あっての著者でごぜえますから否も応もございませんですぜ、ゲヘヘヘ……。

 というわけで、11月29日20時から第二回教祖マニュアルラジオを行います。前回はあまりに何も考えてなくてアレだったので、今回はちゃんとテーマを決めまして、「次回作公開打ちあわせ」を行いたいと思います。つまり、リスナーの皆さんが僕たちのために次回作のアイデアを出して、それを担当がエラそうにダメ出ししつつ、イケてるアイデアは自動的に僕たちに無償譲渡されて次回作に活かそうという乙一さんもビックリのムシの良い内容となる予定ですので皆さんぜひご協力下さい! 僕たちのメシのために!!


11月29日 20時〜

<話す人>

架神恭介(教祖マニュアル書いた人)
・愛忍者(真言宗僧侶/次に一緒に書く予定の人)
・担当(担当)

格安ボジョレー

「ついに320円ボジョレー登場! 新規参入のスーパースター社」


 ここの社長のことは僕も前から知っていて(といっても伝記を4冊ほど読んだだけですが)、この人、酒造業ばかりでなく大工や魚の養殖など色々やってるんですよね。父親が業界の大物なので、その権威をかさにきて威張ることもあるそうですが、一方でボランティアの医療行為もしているなかなかの人格者という話も聞きます。 今回のビジネスも大きく成長しそうですし、早めに銀貨30枚でM&Aしといた方が良いのかもしれませんね。

エホバの証人の終末観

 今回は「エホバの証人」の終末観を紹介。本当はカトリックと比較しながら書きたかったんですが、長くなっちゃったのでエホバの証人単体でお送りします。


・まず前提として、エホバの証人にいわゆる「魂」の概念はありません。言葉としてはありますが、「人々」や「命」といったニュアンスであり、肉体の死後も継続して存在し続けるような「魂」はありません。(※これはおそらくユダヤ教からの流れです。機会があればまた別のエントリーで触れます)

・ただし、それで人の存在が一切痕跡なく消えてなくなるのかと言えばそんなこともなく(それじゃ復活できませんからね)、「記念の墓」の中に彼らの痕跡が残ります。この「記念の墓」というのはエホバ(キリスト教の神を彼らはこう呼びます)の記憶のことで、エホバをコンピューターに例えるなら、たとえば僕(架神恭介)が死んだ場合は、「架神恭介」と題されたデータファイルがエホバのハードディスク内のゴミ箱に送られるようなイメージです。ゴミ箱に送られただけだから「復活(元に戻す)」可能性が残るというわけです。


レッツ、終末!

・終末の流れですが、まず「終わりの日」というのが始まります。これがいつから始まるかと言うと、実はもう始まっていて1914年からスタートしているようです。なんで1914年かと言うと、旧約聖書のダニエル書の預言が根拠になっています。詳しくはこちらに書かれていますが、聖書のあっちとこっちを対応させてアレコレやるとこういう数字が出てくるわけです。「なんじゃそりゃ」「MMRみたいだな」と思うかもしれませんが、別にエホバの証人だけがやってるわけではなく、こういうのはカトリックもやってることです。

・次に「終わりの日」の期間中に「大患難」というのが始まります。これがいつ始まるのか、いつまで続くのかは分かりません。でも、もうすぐ始まるとエホバの証人は考えています。「大患難」の特徴としては、

①世界帝国、もしくは世界を牛耳る組織(いわゆるフリーメーソン的なイメージの組織)が成立する
②偽りの宗教(ただし、エホバの証人にとっての)が①により攻撃されて消滅する

 ということが起こります。①については「英米世界強国」ならびにそこから派生した「国際連合」がそれではないかと考えているようです。そういった組織が「偽りの宗教」を攻撃し、それらは全滅します(詳しくはこちら)。「争いの元になる宗教が全滅したから世の中平和だぜー」と世界中が平和を謳歌します。

※彼らの言う「真の宗教」とは「聖書を忠実に守ること」です。エホバの証人からすればカトリックプロテスタントなどは「聖書を忠実に守っていない」から真の宗教ではありません。仏教やゾロアスター教なんかはそもそも聖書を使っていないから論外と思われます。なので、彼らからすれば「聖書を(彼らの考える基準で)忠実に守ること」により、自分たちが「真の宗教」になることができるわけです。「自分たちは既に真の宗教である」ではなく、「聖書」という絶対的な基準があり、それに合わせることで真の宗教(の信者)になれるという考え方です。

・ですが、世界が平和を謳歌してると今度はハルマゲドンが起こります。ハルマゲドンは大患難の最高潮のことで、前に偽宗教を潰した世界帝国が、今度は真の宗教を潰そうとします。つまり、エホバの証人が真の宗教だった場合は、エホバの証人以外の全ての宗教が全滅して、最後に世界帝国がエホバの証人に手をかけようとするわけです。

・すると、ここで天の王国が介入してくるそうです。そして、「天の勢力vs世界帝国」が始まります。といっても、別に天使軍団がアメリカ軍と戦ったりするわけではなく、自然災害や天変地異などが生じて世界帝国が滅びるようです。(詳しくはこちら


ハルマゲドンその後

・さて、無事に地上の邪な勢力が滅んだら、ここから裁きの日がスタートします。いわゆる「千年王国」というやつです。千年王国は天国とかではなく、現実のこの地上で誕生します。千年王国に最初からいるのは大患難を生き残った人たち、つまり、「真の宗教の人たち」ですね。「真の宗教の人たち」はエホバの証人いわく「自分たちがそうなりたいと思い努力している」人たちということですが、まあ、「真の宗教の人たち」=「エホバの証人」と考えちゃって構わないでしょう。エホバの証人以外が「真の宗教の人たち」になれる可能性はないらしいですし。

・ちなみに千年王国の間、イエスと14万4000人の甦った人たちは天から地を支配します。地というのがこの現実の地上世界のことで、天というのは宇宙空間という意味ではなく「霊的な世界」くらいのニュアンスです。

・14万4000人というのは黙示録14-1に出てくる数字で、イエスの死後、しばらくの間(70年くらい)のクリスチャンはこの14万4000人にカウントされていったらしいです。なんでもその頃は霊的なレベルが高かったらしいけど三位一体などの教義が入ってきて段々レベルが下がったようです(エホバの証人三位一体を異教の教えであるとして否定します)。それからは「(彼らの基準で)ちゃんと聖書を守っている人」が少なくなったのでカウントされる人も毎年ぽつぽつになりますが、それでも1930年頃には14万4000人分の席が埋まっちゃったらしいです。なので、これからエホバの証人に入っても14万4000人には入れません。

・というわけで最初の時点では、地上にはエホバの証人の人しかいないわけですが、ここから「これまでに死んだ人類ほぼ全て」が順次肉体を伴って生き返ります(詳しくはこちら)。善人も悪人も関係なくみんな生き返ります。生き返るといってもゾンビのように墓から起き上がるわけではなく、エホバの記憶から再生されるイメージです(エホバをコンピュータとするならデータファイルを「ごみ箱から元に戻す」感じ)。

・それで甦った人たちに対して、最初からいたエホバの証人の人たちが、エホバやイエスについての教育を施します。最初はサクッと教育できそうな人から甦ります。ちょっと手の掛かりそうな人は後で甦ります。サクッと教育できた人たちも教育する側に回って手の掛かる人たちを教育できるため、その方が効率がいいからです。

・なお、これまでの人類の歴史上の全ての人間が復活したら地球なんか溢れそうな気がしますが、それは大丈夫らしいです。というのも聖書にはそんな大昔のことなんか書かれてないので、エホバの証人的には人類の歴史はたかだか6000年くらいなのです。

・ただし、「ほぼ全てが生き返る」と書いたように生き返らない人もいます。生前に完全に神を退けた人です。これは「なんとなく信じない」くらいのレベルではなく、一度神を信じて、その上で自由意志により背教した人のことです。具体的にはイスカリオテのユダ(イエスを銀貨30枚で売った人)などは復活できません。復活できない人はゲヘナ行きとなります。ゲヘナというのは一般に地獄と訳されていますが、エホバの証人では「地獄に落ちて苦しむ」ということはなく、「復活の希望が永遠に絶たれる」こととしています。(エホバをコンピュータとするなら「ゴミ箱から完全削除」です)

※ここから「エホバの証人をやめる(一度信じた上で捨てる)とゲヘナ行き」という論理に繋がるようです

千年王国が終了すると「神に従う」「神に従わない」の最終分岐となります。ここであえて「神に従わない」を選ぶとゲヘナ行き。「神に従う」を選んだ場合はアダムとイヴが失楽園する以前の状態で永遠にハッピーに生きることとなります。このゴールをエホバの証人は目指しているわけです。

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ラジオ告知

 11/22(日曜)の20時からインターネットラジオやります。特にテーマは決めてないんで適当にくっちゃべります。<話す人>

架神恭介:本書いた人、主に仏教・キリスト教方面を担当
raven:本書いた人、主にイスラム教方面を担当<ゲスト>

愛忍者さん:真言宗住職

隻手音声

 今回は嘘字幕ネタ。嘘字幕で禅問答をやってます。この作中で「片手で拍手」と言っているのは臨済宗中興の祖と称される禅僧、白隠慧鶴の代表的な公安である「隻手音声」。白隠さんってのは拙著「完全教祖マニュアル」で言うところの「師匠にボコスカ殴られてガケから突き落とされ、ババアに箒で尻を殴られた瞬間大悟した人」ですね。

 それで、この隻手音声ですが、Wikipediaによればこのようなものとなっています。

>> 「隻手声あり、その声を聞け」 (大意:両手を打ち合わせると音がする。では片手ではどんな音がしたのか、それを報告しなさい。)

 禅問答というのはこういう訳の分からん、理屈ではとても答えようのない問題を出されるものですが、これは別に引っ掛け問題とかとんちクイズとかいうわけではなく、「理屈で答えを出せないこと」それ自体が重要であると言われています。この辺りの話は哲学的でクソ難しいのでザックリ省きますが、どうも悟りというやつは言語では表しきれないもののようで、だから言語(理屈)の到達しえない問題を出すことで言語の到達できない高み(悟り)へと導こうとする、そんなもののようです。ちなみにボコスカ殴るのもその一環で、「頭ン中で色々考えてても、てめえ、殴られりゃ実際いてえだろ!?」ということみたいです。まあ、僕は悟ってないので本当かどうか知りませんが。

 ちなみにこの隻手音声ですが、古橋秀之先生の宗教レイプサイバーパンク小説『ブライトライツ・ホーリーランド』においては、以下のような扱われ方をしていました。

グウが地竜の頭部に向けて右手を突き出すと、体内で圧縮された気が、砲撃のような破裂音と共に、掌から放たれた。
ヤコは刮目した。
隻手音声。―――
時として、「座禅」に対して「斗禅」とも言われるコマンド・ヨーガ―――その公案(カリキュラム)の最高峰に位置する「隻手音声」は、超絶的な気の出力と、その完璧な制御によって初めて可能になる技だ。しかも、手を打ち鳴らす程度の音が出れば及第とされているそれを、ナムは実戦における攻撃手段として用いている……。
圧縮された気の塊を打ち当てられ、地竜の頭部が数メートルも跳ね上げられた。
そして、地竜は悲鳴を上げ、体をねじりながら巨大な仏塔のように直立し、金色の光を放ちながら消滅した。

 古橋先生はマジでクレイジーだと思ってます。

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ものすごく長い三行半

 質問を頂きましたー。

>> 完全教祖マニュアル買いました。
>> 今回のエントリもなかなか興味深く拝見させていただいてます。

 ありがとうございます( ^ω^)


>> ただ、教祖マニュアルの内容なのですが、近づきやすさ-取り込みやすさのグラフ
>> でキルゲゴールが息子と同じぐらい近づきやすいってのはどういう考えから
>> あそこにプロットしたのでしょうか?
>> 特に本文中でも補足が無く、故人に対して近づきやすいってイメージが
>> わかなかったので、是非教えて欲しいのですが。


 ……ハイ。というご質問ですが、すいませんぶっちゃけギャグなんであんまり深く考えてません。キルケゴールが息子くらい近付きやすいってことはないですよねwww

 ただ、イメージ的にはニーチェとの対比で考えています。なので、「接近のしやすさ」というよりは「女にモテたかどうか」という視点が強いです。僕の中でのニーチェのイメージはルー・ザロメにフラれて生涯ションボリしている喪男で、なんだか近付きがたい雰囲気があります(実際は女友達もいましたけど)。それに彼の肖像画を見ても「あわわ、頭痛い。ちょっと待ってくれませんか……」って感じがしませんか。

「あわわわ……」


 一方、キルケゴール爽やかな感じのイケメンで、私生活においても27歳の時に10歳年下のレギーネオルセンを口説いてメロメロにさせてるわけです。しかも、そのレギーネちゃんを一方的にフッてるんです。


 ちなみにレギーネオルセンはこんな感じの子。キュートですね。こんな可愛い子を口説き落として一方的にフッちゃう辺り、かなりモテモテだったんじゃないかなあと思われます。

 いやいや、ですが、しかし、キルケゴール十分にアレな人でして、レギーネちゃんを一方的にフッた後に、「僕がキミをフッた理由は全てここに書いてある。これを読んでくれ」と言って渡したのが「おそれとおののき」。大体どんなことが書かれてるかはここのエントリーに詳しいですが、さらっと見てもらえれば分かるとおり、こんなもん渡されてもレギーネちゃんは困っただけだと思います。僕がレギーネちゃんなら、とりあえず殴りますね。ちなみに僕の学生時代の先生はキルケゴールのこの行動を指して、「こんな形で愛を伝えるなんてキルケゴール本当にロマンチックで素敵ですね!」と仰ってましたが、すいません、それ1ミリも共感できません。

 あと、これは愚痴なんですが、キルケゴールのやろうは本当に読者のことを考えねーやろうで、たとえば彼の著作「死に至る病」には以下の有名な一節があります。

>> 人間は精神である。しかし、精神とは何であるか?
>>  精神とは自己である。しかし、自己とは何であるか?
>>  自己とはひとつの関係、その関係それ自身に関係する
>>  関係である。あるいは、その関係において、その関係
>>  がそれ自身に関係するということ、そのことである。
>>  自己とは関係そのものではなくして、関係がそれ自身
>>  に関係するということなのである。

 どう見ても怪文書です。本当にありがとうございました。まったく、こんなモノを書いたせいで、後世の大学生たちがレポート作成で地獄を見ることをどうして彼は考慮できなかったのでしょうか。猛省して欲しいですね。(ちなみにここのセンテンスの解説を昔書いたのですが、たぶんこれでもまだキツイと思います。久しぶりに読み返してキツかったもん)

 ***

 というわけで、ちょっと話が脱線しましたがまとめますと、

ニーチェ喪男
キルケゴールはイケメンでモテモテ
ニーチェは近付きがたい。話もできなさそう。
キルケゴールとは話はできそう
・でも、キルケゴールの言ってることは多分何一つ理解できない

 という感じであの図は作られたわけですね! ニーチェキルケゴールを宗教勧誘なんて考えただけでげっそりしますよ!

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