「幸福の科学ナイトだぜよ!」に行ってきた

「幸福の科学ナイトだぜよ!」に行ってきたので、その場の発言を僕のコメント付きでまとめておきます。クソ長いです。すいません。イベントの参加者は、

>>  出演者は、饗庭直道氏(幸福実現党広報本部長代理・元党首)、渡邊伸幸氏(幸福の科学広報局部長)、小林郁子氏(同課長)、有田芳生氏(民主党参議院比例区第61総支部支部長・ジャーナリスト)。司会はやや本紙主筆藤倉善郎フリーライター)です。さらに、里村英一氏(『ザ・リバティ』編集長)と山田直樹氏(ジャーナリスト、『新宗教マネー』著者)の参戦も決定しました。(やや日カルトより引用)

 幸福の科学側の発言の前には(幸)を付与しておきます。なお、茶色で書かれたものは僕のコメントです。(文責:架神恭介


 ***

【第一部:主に幸福の科学側からの話】

・(幸)本尊はエル=カンターレ釈迦大如来とも。大毘盧遮那仏と呼ばれたり、天空神アヌと呼ばれたりもする。光のイメージ。その中心人物が大川隆法(太陽神のイメージか?)
・(幸)幸福とは死後の幸福もあるし、現世での幸福もある。幸福の科学の「幸福」定義は現世、来世に渡る幸福)
・(幸)幸福の科学の教えは愛と悟りとユートピア建設。愛はもらう愛ではなく与える愛。悟りは心の本当の価値に目覚めること。ユートピア建設はこの地上が魂修行に最適な場所になるようにすること。そのため、学校経営、立党、ボランティア活動などをしている。
・(幸)(フライデー事件に関しては)他の出版社もあちこちが捏造記事を書いていたが、他は抗議すれば修正するなり謝罪するなりした。講談社だけは突っぱねたので抵抗した。『世の中は正しくあるべき』という観念がある。(質問されたことには全て答える、というのが現在の幸福の科学のスタンスで、幸福の科学側の発言に対して質問者が独自意見を加えて原稿を書いたとしても、それに対してどうこう言う事はない。ただ、こちらの発言がねじ曲げられた場合には物言いをする、とのこと。『世の中は正しくあるべき』というのは「事実を重視する」という姿勢だろうか)
・【ここで大川氏が霊言を行う様子のビデオ上映。坂本龍馬勝海舟吉田松陰の霊が降りてきた時のものが各3分ほど】(大川氏の霊言の様子は一般にイメージされるシャーマニズムの「切れ切れに、ボソボソと」神託を告げる形ではなく極めて流暢な話しぶり。言い方は悪いが「モノマネをしている」というのが一番ピンと来るイメージだろうか)
・(幸)(大川先生に)魂が降りてくると雰囲気が変わる。そのことが頭ではなく体で分かる。坂本龍馬勝海舟の時はそうでもなかったが、吉田松陰の時は足がガクガク震えた。後で聞いたところ、吉田松陰の神格が高いかららしい。
・(幸)立派でない霊にも話を聴くことはある。朝日新聞の社長にも聞いた。(いまいち聞き取れなかったが、「朝日新聞の社長の守護霊は自分の状況を理解していなかった」というようなことを言っていた。大川氏の降霊には色々とヴァリエーションがあるようだ)
・(幸)降りてきた霊に質問などしに行くが、たいてい叱られる。
・(幸)民主党が政権を取ると景気が悪くなる。あと、アジアの安全保障の問題。この二点を論点として幸福実現党はスタートした。
・(幸)マスメディアは幸福実現党を宗教のための宣伝と考えて軽視していたが、参議院選でも候補者を出したのでマスメディアも「本気なんだな」と認識を改め始めている。
・(幸)民主党による日本沈没を防ぐために急遽立ち上げた。(全体の論調からすると、どうも幸福の科学民主党を大変危険視しており、それへの対抗勢力として政界進出をしたようだ。少なくとも彼らの表向きの見解はそういうことになっているらしい)
・(幸)選挙に出るのをやめたとか、やめるのをやめたとかのゴタゴタは、議席が伸びないから一時撤退して自民党の応援に回ろうという議論もあって、その途中経過のものがマスコミにリークしたから。しかし、結論としてはやることになった。大川先生も一時撤退を口にしたが周りの流れでやることになった。幸福の科学は一般にイメージされているほどトップダウンではない。(よく言えば「トップダウンではない」だが、悪く言えば「大川氏が手綱を握りきれていない」とも言える)
・(幸)幸福の科学は政治的に保守的な姿勢がある。自民の保守勢力には期待していたが、北朝鮮のミサイルが飛んできたときの対応を見て、これでは日本を守りきれないという思いがあった。あのミサイルがなければ、もしくは政府の対応がもっとしっかりしたものであれば立党の時期はズレたかもしれない。
・(幸)幸福の科学はイジメや不登校支援などもしている。災害支援も。口蹄疫にも義援金を送っている。

※ここまでが第一部。主に幸福の科学側からだけの意見。身内擁護の意見になるのは仕方ないので、どの意見からもその分を差し引いて見るべきだろう。


【第二部:幸福の科学外の人を交えたディスカッション】

・同じ選挙区から幸福実現党の人が出馬してて、交流があって、ちゃんと常識的でいい人だな、と思ったが、「金正日政権は潰さねばならん」って言ってて、その気持ちは同じだけど、その後「ミサイル撃ち込まねば」と言ってて、「オー、スゲーこと言うなあ」って思った。
統一教会の記事を書いたら統一教会から凄まじいクレームが来たけど、幸福の科学フライデー事件の前までは仲良くしてたのに、フライデー事件の後は取材拒否とかされて、「統一教会と同じだな」と思った。(この辺りの発言は「幸福の科学を科学する」の著者である有田氏によるもの)
・オウムの人も統一教会の人も幸福の科学の人も個人個人はイイ人たちだけど、大川氏が「フライデーに攻撃せよ」と言ったらイイ人たちであってもフライデー事件のようなことをする恐れがある。
・(幸)有田さんは日刊ゲンダイにも書いてたから敵側だと見ていた。でも、あの時の有田さんへの対応は乱暴だったと思う。ただ、19年前はマスメディアの宗教への書き方が、ある程度、信仰を認めて書いている今と違って遠慮がなく、大川先生の霊言にも遠慮なく「詐欺だ」と書いたりしていた。(当時の状況がそうさせたのだ、という含みがあると思われる)
幸福の科学は当時は「(フライデーへの過度な抗議活動に対して)本部からの指令はない」と言っていたが、後に大川氏は「戦いなさい」と言っている。フライデー事件を過去のエピソードにしてはいけないのではないか?(ここのニュアンスは、フライデー事件の非常識的とも言える行き過ぎた活動を抑止できるような反省が行われていない、当時の問題点を美化せず総括するべきでは、といったもの)
・(幸)大川先生の「戦いなさい」は宗教的なプロテストであって、そういった意味ではない。(「宗教的なプロテスト」の意味合いとしては、たとえば現代人の唯物主義に対して断固として「それは違う」と発言し啓蒙するような態度、といったものだろう。発言の文脈がイマイチ不明だが、大川氏の発言趣旨がその通りであれば筋は通っている)
フライデー事件の時の嫌がらせのような電話攻勢はアリなの? 非常識じゃないの?
・(幸)他に手段がなかった。(相手側に)間違いがあったら行動に移す。(これは先の『世の中は正しくあるべき』という観念に関わるものだろう)
創価学会幸福の科学の人の乱闘をたまたま見た。「邪宗創価学会を撲滅せよ」といった排他性も幸福の科学にはあるが、他宗派に対してどういう向かい方をするのか?
・(幸)宗教の中で宗教の問題を解決すべき。日蓮正宗系には排他性があるが、そういうのとはディベートなどにより教義レベルで正すべき。公明党のことは部分的に評価している。(国家が宗教に介入すると弾圧になるから、ちゃんと宗教のことが分かっている宗教同士で解決すべき、ということらしい。しかし、実現不可能だと思う)
・(幸)(フライデー事件に関して、広報部長としては)個人的にはやり方は良くなかったなあ、と思っている(この後、資料画像などを少し見て、個人としてはともかく、幸福の科学として組織的には反省のニュアンスがないことが(おそらく)確認される。むしろ美化されている傾向さえある。ただ、この広報部長の人は本当に「良くなかった」と感じているようだった)
幸福の科学の人たちは個人としては常識的だけど、組織の方向として大丈夫とは思えない。
・(幸)あの時はメディアの宗教に対する扱いについて問題提起をするタイミングだった。
幸福の科学は組織としてあの事件に対して総括をすべきではないか? オウムも自分たちの起こした問題について全然不十分だとは思うが反省をしている。
・(幸)フライデー事件は大昔のことだ。過去のことをほじくり返すのはよくない。あれは今のことではない。あの時は組織も出来立てだった。組織もあれから成長している。今がどうかは今の活動を見れば分かる。何も反社会的なことはしていないし、ボランティアなどもしている。オウムと一緒にするな。(今回の最大の問題点はここだと思う。これについては後述するが、現場では「オウムと一緒にするな」の後に拍手が起こり、その勢いでウヤムヤのうちにこの大切な議論が流された。感情論により議論が破壊された瞬間である)

※第二部はもう少し続くが、この後はQ&A形式の記述方法に変更する。基本的にはアンサー側が常に幸福の科学側である。

Q:幸福実現党って幸福の科学じゃない人も入れるの?
A:国民政党だから誰でも党員になれる。幸福の科学じゃない人も既にいる。


Q:なぜ既存の政党を応援せずに自前の政党を作ったの?
A:自民保守を応援していたが、阿部→麻生の流れを見ていて任せておけないなと思った。


Q:自民には具体的にどんな応援を?
A:ボランティアとして人的労働力を供給していた。ビラを折ったりとか。


Q:幸福の科学の信者数は公称1100万人なのに、得票数が45万票だったのは?
A:冊子の発行部数がその数字なのであって実際の信者数とは異なる。あと、得票数は少なすぎて自分たちでもびっくりして愕然とした。


Q:実際の信者数って数十万くらいじゃないの?
A:「選挙出たら実数バレるよ」って脅されたけどそれでも出馬した。国難だからやらざるをえなかった。宗教は普通は(信者の投票の自由を縛るけど)、幸福の科学は「投票しなかったら地獄に落ちる」的なことは言わない。


Q:党代表とかがガンガン変わるけど、内部の人事はどうなってるの?
A:外部から見ても民主的に見えるように頑張りたい。


Q:政治と宗教の一致を唱えてるみたいだけど、政教分離はどうするの?
A:政教分離自体を考えなおさなきゃいけない。原則としては政教分離は権力による宗教弾圧に対抗するためのものであって、信仰を持つ者が参政すること自体は当然思想信条の自由で許されている。
(私は政教分離の法的解釈は知らないが、確かに歴史的に見ればそのような流れではある)


【第三部:来場者とのQ&A】

※確かこの辺りから第三部だったと思う

Q:幸福の科学の言う宗教立国ってのは?
A:他の宗教を叩き潰すという意味ではない。ただし、宗教による道徳心は必要。唯物論の国は北朝鮮も中国もロクでもない。そういう意味での宗教立国。


Q:政権を取った場合、他宗教に対してはどうするのか?
A:弾圧はしない。一番大事なのは自由という価値観。信仰の自由。
(信仰の自由はあるが、無信仰の自由はないらしい。ちなみに「信教の自由」は一般的には「信仰しない自由」も含む)


Q:聖おにいさんについてはどう思う?
A:まじめに修行している人には怒っている人もいたが、若い人に宗教が縁遠いものになっている今、こうやって若い人に知られるのは良いこと。
(妥当な意見ではあるが、優等生すぎてつまらない。しかし、それはそれとして、幸福の科学に「修行」があるというのに驚いた。この時に気付いたが、このイベントに参加して二時間超が経過しているのに、未だに幸福の科学の教義的、思想的なもの、修行体系などはほとんど一切語られていない)


Q:何か問題のあることを書かれても、まずは冷静に口頭で撤回を求めるところから始めるというが、もしも大川氏が「イキナリ抗議しろ」と言った場合、それに従うのか? 「大川先生はそんなこと言わない」以外で答えて欲しい。
A:「ハイ」という素直な声が信仰だと思うけど、納得のできない指令が来た時は上司と議論する。政治からの撤退の時もそうだったが、大川先生からの意見でも従わない時もあるから大丈夫。(これは実は私の質問。幸福の科学側の回答もある程度は回答になっている。ただ、これも悲観的に見れば、信者の「そうしたい」という思いと教祖の言が一致した時は教祖に従って、信者が「そうしたい」と思って教祖が止めようとしても信者が暴走する、という見方もできる。思想的、システム的な防止案には達していない。……が、この問題は難しいので、これでもまあまあ誠実な回答だと思う)


※以下は有田氏への質問
Q:有田さんは拉致被害者問題やってたのに、なんで民主から立候補してんの?
A:政党は道具。和して同せず。ダメなものにはダメって言ってる。(どうやらガン治療に関する何らかの事業のために民主に身を置いているようだ)


※以下はひかりの輪(元オウム)の人に対する質問
Q:大川氏を∨Xガスで殺そうとしたのは本当なの?
A:直接的な回答なし
(明言はしなかったが、本当であるようなことを匂わせるニュアンスにも思えた)


※最後にもう一度幸福の科学に対して質問。
Q:非実在青少年問題はどうなの?
A:党の公式見解は出てないから分からないが、個人的には反対。


Q:エル=カンターレのBL本は描けるの?
Å:描けるよ!


 ***

 今回、一番問題に感じたのは第二部のフライデー事件に関する討論でした。この時の議論を整理すると、まず、フライデー事件の際には幸福の科学側があまりに過剰な、非常識的とも言える抗議活動を行った(実際に違法とされている)とし、この点を問題視した上で、その反省が今に活かされているのか、という点を有田氏が突きました。

 有田氏は「総括できているのか」という表現を使っていましたが(総括って言うとなんだか学生運動っぽくてアレですね……)、これは要するに、宗教団体というものは教祖の命令などによって反社会的な行動をしてしまうこともありえる(と、少なくとも社会は見ている)のだから、過去の問題を反省し、同様の反社会的行動を未然に防ぐための理論化なり思想化なりシステム的な整備なりが組織的に出来ているのか、という問題定期であったと、僕はそのように捉えています。そういった何らかの反省の跡がなければ、たとえ中の人たちが各自で十分に反省していたとしても、外部の人達は決して安心できないわけです。これは幸福の科学に限らず、宗教団体に関する普遍的な問題と言えるでしょう。意義ある問題提起です。

 幸福の科学で言えばフライデー事件の際に反社会的行動がどのようにして生じたのか、それの問題点の解明、また、それを防止するためのシステム作りなど、それなりに真摯な姿勢で取り組んでいれば(それが本当に効果を発揮するかどうかは別として)社会的にも一定の評価を得られたと思います。ですが、現状ではそういった風潮は(おそらく)見られないわけで、さあどうするんだ、というわけです。

 しかし、これに対する幸福の科学側の応答は、「それは昔のことであって、今は組織も成長している。あれから反社会的なことは何もしていない。今の現状を見て欲しい」というものでした。しかし、それでは過去の反社会的行動に対する反省はないわけで、成長したと言っても、同様の状況が生じた時に社会的な対処ができる保証はないわけです。同じことを繰り返さないとも限りません。反省と言っても、必要なのは謝罪の言葉でも反省文でもなくて、同じことを繰り返さないための何らかの防止策なのです。ですがまあ、口先でピーチク言っても今度は「態度で示せ」と言われるでしょうから、幸福の科学側が「現状をもって答えとしたい」という気持ちも分からんでもありません。十分な回答とは言えませんが、議論のいちステップとしては、ここまではナシではありません。

 しかし、問題だったのが、その直後の「オウムと一緒にするな」という感情的な物言いです。これに前方の客が(彼らが信者なのかどうか分かりませんが)呼応して拍手を送り、議論が勢いのままに流されてしまったのです(さらにガッカリなのが、横から「隠れ信者」を自称する人が「有田さんはしつこい」と口を挟んだことです。これで会場の空気は一転して議論が続けられる雰囲気ではなくなりました)。この時に有田氏がオウムを引き合いに出したのは、「宗教団体における問題の発生」という構造の類似を示すためです。「宗教団体が引き起こした問題の程度」の類似ではありません。それを何を勘違いしたのか、幸福の科学側は「オウムと同じ大犯罪集団だと言うのか!」と怒りだし、それを何を勘違いしたのか、前方の客が拍手喝采を送ってしまったのです。

 これにより、「宗教団体における反社会的問題の発生とそれへの反省」という有意義な議論は終了。有意義な問題提起が勘違いとその場のノリで終了したのです。有田氏は真面目な話をしてるのに勘違いで悪者扱い。見ていた僕も「幸福の科学はこの程度の議論もできずにヒステリーを起こすのか」と呆れるばかりです。この勘違いが、どこぞの一信者によるものではなく幸福実現党の元党首によるものなのもガッカリ。

 後に、ひかりの輪(元オウム)の人が「今はやってないって言ってるのはうちだって同じ。うちと幸福の科学の『やったこと』は確かに全然別物でうちらの方が断然悪いけれど、それはそれとして過去の違法行為はちゃんと総括すべき。そうでないと外部にマイナスイメージを持たれる。同じく宗教を信仰している者として幸福の科学の人にも頑張って欲しいから、これはちゃんと総括した方がいいと思う」と言っていましたが、こちらは極めて真っ当な意見でびっくりです。幸福の科学のイメージがだだ下がりした一方、ひかりの輪のイメージはちょっぴり向上しちゃいました。


追記1:「司会者としては、ほどほどで矛を収めた有田さんの力加減と、客席から絶妙なタイミングと内容でツッコミを入れてくれた鈴木邦男さんに、かなり助けられました。」と主催者が言ってるので、横からの「しつこい」の物言いもイベント構成上は良いものだったのかもしれません。僕は納得いかねーけど。

追記2:ツイッター上での実況など。こちらも目を通せば総合的にイベントの様子が見えてくるかも。

追記3:考えようによっては、あの議論が感情論で潰されたこと自体が「(幸福の科学は)今はもう大丈夫」という主張の反証になっているのではないだろうか。

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