隻手音声

 今回は嘘字幕ネタ。嘘字幕で禅問答をやってます。この作中で「片手で拍手」と言っているのは臨済宗中興の祖と称される禅僧、白隠慧鶴の代表的な公安である「隻手音声」。白隠さんってのは拙著「完全教祖マニュアル」で言うところの「師匠にボコスカ殴られてガケから突き落とされ、ババアに箒で尻を殴られた瞬間大悟した人」ですね。

 それで、この隻手音声ですが、Wikipediaによればこのようなものとなっています。

>> 「隻手声あり、その声を聞け」 (大意:両手を打ち合わせると音がする。では片手ではどんな音がしたのか、それを報告しなさい。)

 禅問答というのはこういう訳の分からん、理屈ではとても答えようのない問題を出されるものですが、これは別に引っ掛け問題とかとんちクイズとかいうわけではなく、「理屈で答えを出せないこと」それ自体が重要であると言われています。この辺りの話は哲学的でクソ難しいのでザックリ省きますが、どうも悟りというやつは言語では表しきれないもののようで、だから言語(理屈)の到達しえない問題を出すことで言語の到達できない高み(悟り)へと導こうとする、そんなもののようです。ちなみにボコスカ殴るのもその一環で、「頭ン中で色々考えてても、てめえ、殴られりゃ実際いてえだろ!?」ということみたいです。まあ、僕は悟ってないので本当かどうか知りませんが。

 ちなみにこの隻手音声ですが、古橋秀之先生の宗教レイプサイバーパンク小説『ブライトライツ・ホーリーランド』においては、以下のような扱われ方をしていました。

グウが地竜の頭部に向けて右手を突き出すと、体内で圧縮された気が、砲撃のような破裂音と共に、掌から放たれた。
ヤコは刮目した。
隻手音声。―――
時として、「座禅」に対して「斗禅」とも言われるコマンド・ヨーガ―――その公案(カリキュラム)の最高峰に位置する「隻手音声」は、超絶的な気の出力と、その完璧な制御によって初めて可能になる技だ。しかも、手を打ち鳴らす程度の音が出れば及第とされているそれを、ナムは実戦における攻撃手段として用いている……。
圧縮された気の塊を打ち当てられ、地竜の頭部が数メートルも跳ね上げられた。
そして、地竜は悲鳴を上げ、体をねじりながら巨大な仏塔のように直立し、金色の光を放ちながら消滅した。

 古橋先生はマジでクレイジーだと思ってます。

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