メッカ巡礼 supported by パナソニック

広告禁止のイスラム聖地に巨大看板 パナソニックがメッカで世界初

 企業広告が禁じられていたイスラム教最大の聖地、メッカ(サウジアラビア)で、パナソニックが看板の設置などの認可を受け、広告活動を始めたことが7日、分かった。空港内の巡礼専用ターミナルやモスク(礼拝堂)の駐車場などに多数の巨大看板を設置した。メッカで企業広告が認可されたのは、同社が世界初。同社は巡礼者を対象に「ハッジ(巡礼)」のロゴがデザインされた家電製品を販売するなど、サウジアラビアを新たな戦略エリアとして注力している。(以下略)


 広告禁止も(想像は付くけど)知らなかったし、解禁も知らなかったし、その権利をパナソニックが買い上げていたのも知らなかったし、パナソニックがサウジで200億の売上をあげているのも知らなかったし、ハッジが家電の宣伝にうってつけなのも知りませんでしたが、ハッジ印の家電とかメチャメチャ欲しいですね。ムスリムじゃなくても欲しくなる。


 ……というわけで、最近はハッジに企業のCMが導入されたみたいですが、しかし、昔はある意味、ハッジは国家のCMという面があったみたいです。ワッハーブ派原理主義的で厳しいイスラムサウジアラビアはこれ)より以前は、巡礼は国家の権威付けに利用されていたらしいのです。

 巡礼というのは世界中からムスリムがあつまるイベントです。なので、そのキャラバンを保護することは広大なイスラム世界において支配権を確立している証となるわけです。例えばキャラバンを組織する際も、王様が諸々の経費を負担してくれましたし、砂漠で遊牧民に襲われないよう護衛部隊も付けてくれました。オスマントルコの例だとイエニチェリ軍団1500名で1万人の巡礼者を護衛したとも言われます。道中の水や食料についても王様が面倒見てくれて、具合が悪くなったときは手当もしてくれるし、シャーベットなんかもタダでくれたらしいです(by『三大陸周遊記』)。

 で、そうして王の威勢を見せつけられた巡礼者たちは、帰りの道のりや、さらには郷里に帰ってからもそのことを話題にしてくれます。クチコミが広がるわけですね。また、交易の安全を保つ能力があることを実証するのは商業的信頼にも繋がったわけです。

 しかし、こういった「王様のCM」的な側面をワッハーブ派は「イスラム的ではない」「不純である」として排除したらしいのです。もちろん一般の巡礼者はちょう迷惑。オスマントルコも怒ってワッハーブ派を攻めますが、先にオスマントルコの屋台骨がぐらついちゃってワッハーブ派が再興。そうして今のサウジアラビアに繋がったと言われます。

 なので、この理屈でいくとパナソニックがCMを出せた理由は良くわからないのですが、サウジアラビアワッハーブ派)はこの辺りどう処理したんでしょうかね??

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