ブッダマシーン - 完全教祖マニュアル

　仏教のお経は、全て仏陀（釈尊）が直接に説いた教えであるとされているが、仏教文献学的には法華経などの大乗仏典はすべて後代の創作であり、仏陀の教えとは直接関係ないものと考えられているのは周知の事実である（大乗非仏説）。

　だが、大乗仏教徒にとって、大乗仏典が釈尊の教えでないとするのは信仰上の一大問題であった。その解決のため、北京の仏教徒、獲布獲無三（えふえむさん）が発明したのが、この「ブッダマシーン」である。

　その原理は至って簡単であり、スピーカーの中に仏陀を収めることで、スピーカーから流れるお経を全て「釈迦の直接の教え」へと変換することに要諦がある。獲布獲無三はこれにより、法華経、般若経、華厳経などのみならず、盂蘭盆経、父母恩重経などの偽経、さらには富永仲基の「出定後語」や、マリリン・マンソンの「アンチクライスト・スーパースター」まで釈迦の教えへと変換し、周囲の比丘、雲水を驚嘆させたという。

　なお、現代においても、イヤホンから漏れる音を「シャカシャカ」などの擬音で表すことがあるが、これが仏陀、すなわち釈迦を指していることは言うまでもない。

　　――民明書房刊『音っとっと南無だぜ！』より